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かもしれない~「これでも詩かよ」第64番 [詩歌]

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ある晴れた日に第202回


横浜の栄プールへ行って、平泳ぎで25メートルをやっとこさっとこ9往復した。
合計で450メートル。

区切り良く10往復しようと思ったが、心臓がゴホゴホわめいて駄目だった。
これがいまの私の限界。いまの私の肉体の限界。

生来蒲柳の質の私でも、もっと若い時なら、その倍は泳げたかもしれない。
由良川でも若狭和田の遠浅の海でも、一晩中浮かんでいることができたかもしれない。

もっともっと若い時なら、徴兵されて中国の南京へ連れて行かれて
帝国陸軍の殺し尽くし焼き尽くし奪い尽くす三光作戦!に従事していたかもしれない。

上官の命令は絶対だから、罪もない住民の首を新刀で試し切りし、
妙齢の婦女を同年兵と一緒に強姦していたかもしれない。

どこの国のどの軍隊も慰安婦を引き連れていたそうだから、鼻血ブウの安倍上等兵や橋下一等兵と一緒に毎晩通いつめていたかもしれない。

上官が空に向かって放り投げた赤子の柔らかい腹を、エイヤと銃剣で突き刺して、その真っ赤な血が私の顔に降り注いだかもしれない。

「そうせい」と命じられたら、嫌だ嫌だと思っても、そうしたかもしれない。
それが戦争だなぞと諦めて、眼をつぶってそうしたかもしれない。

やがて舞台がユラリとひと廻りして、また飴色の戦争がやってきたら、
また新しい私のような兵隊が、上官の命令に従ってエイヤアとやるのかもしれないな。

そんなことを思いながら、私はイタチ川を見下ろす栄プールで泳いでいた。
天上から光が差してくるプールのなかは、ジイサン、バアサンで賑やかだった。


なにゆえに権力者にはろくでなしが多いのか最下層には善人多し 蝶人

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