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井上ひさし著「井上ひさし短編中編小説集成第8巻」を読んで [読書]

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照る日曇る日第792回


 本巻では「月なきみそらの天坊一座」「黄色い鼠」「喜劇役者たち」の3冊を収めているが、なかでは真ん中の「黄色い鼠」が面白い。

 1976年に半年ほど豪州に滞在していた著者の体験と取材から生まれた作品で、そこには第2次大戦中の日本人捕虜収容所における脱走事件を伏線に、白人支配者と黄色人捕虜の奇妙な関係、現地先住民アポリジナルの古い歴史と奥深い文明史的知恵、豪州の砂漠の驚異的な大自然などが、考え抜かれた巧みなプロットとともに整然と展開され、読む者の心をとらえて離さない。

 とりわけ印象的なのはアポリジナルの老人で、彼が脱走中の日本人に夏眠中の「水持蛙」の水を飲んだり、甘い蜜を持つ蟻を食べて砂漠の飢えを癒すすべを伝授してくれるのである。

 しかも灼熱の大砂漠を突如集中豪雨が襲い、1週間後には緑の大地が誕生すると聞けば、一度そんな夢のような光景を眺めてみたいと思わずにはいられない。


この程度のブラームスを聴いてブラボーと叫んでるかのチェリビダッケ読響の4番を知らずに 蝶人

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