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吉川一義訳プルースト「失われた時を求めて9ソドムとゴモラⅡ」を読んで [読書]

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照る日曇る日第835回

 自分自身が同性愛者であったプルーストが描き出すシャルリュス男爵の外面マッチョで、その癖女々しい所作や性癖のあれやこれやは、まことにリアルなもので、喜劇に似て悲劇的な“おかま”の実存と本質を、それこそ自虐的に浮き彫りにしてあますところがない。

 シャルリュス男爵とは主人公の「私」であり、とりもなおさずプルーストその人でもあったし、私たちの内部に潜んで蠢く異性でもあった。

 本巻の最後で、その「私」は、いったんは別れようと決意した恋人アルベルチーヌがレズビアンであったと知って驚愕し、なんとか彼女が強力な恋敵に走るのを必死に引き留めようとするのだが、そこでヒステリックに逆上している「私」とは、もはや男であることを放棄した女プルーストなのである。

 げに「失われた時を求めて」こそは、同性愛を、異性愛と並んで、いなそれ以上の人間的な性愛と位置付け、その快楽と苦脳の栄光と悲惨を十字架に架けて称揚した、世界で最初ともいうべき小説なのであった。


        ひとつ家に四人が眠るお正月 蝶人

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