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西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その9 [詩歌]

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ある晴れた日に 第351回


一億を総活躍させるというその一億にどうか私を入れないでください

施設なる四十一歳の息子から「お父さん大好きですお」と電話が掛かる

格別に見たいとは思わない平成39年に建つと云う日本最高ビル

なんとなく先に逝く人が羨ましいそんな時代に生きてる僕たち

プードルの薄茶の巻き毛の幾束が風に吹かれて空に舞いおり

何十年知らんぷりしていた近所の人に突然挨拶するようになったりもする

国がそう出るなら俺っちはこっちを行くぜ

本当はわしゃもう知らん勝手にしろと言いたいところだが

空は晴れたが心は闇だ。杉作、日本の夜明けはまだまだ遠いのお。鞍馬天狗

飽食の時代はますます深まりゆきまた一人ビア樽ダルポルカが街をゆく

道端に転がっていた栗の実が今日のわが家の晩御飯となる

ひともとの栗の大樹の有難さ今夜の御馳走を降らしけり

今日もまた電柱の上に鎮座して大谷戸を統べる一羽の鳶

なにゆえにヤクルトはこんなひどい投手に投げさせるおかげで試合は滅茶苦茶じゃないか
 
イチローに安打が出ないと暗くなる私もアメリカと戦っているんだ

知ることと忘れることとどちらが大切わきまえる歳となりけるかも

詩は鈴木志郎康短歌は奥村耕作私叔する二人を得たるわが晩年の仕合わせ

このまんま息子とガードレールにぶつかって死んでも構わないという気持ちになったと妻は言いけり

知らぬ間に誰かが私を見つめている数限りなき防犯カメラ

私は後退できません後退するときは誰か誘導して下さいと大書せしトラック

熱戦をついに制した若者が人差し指を天に突き上ぐ


  熱海にも鎌倉にも支局持つNHKの人の多さよ 蝶人


西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その8 [詩歌]

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ある晴れた日に 第350回

いかがわしまがまがしくもうざったしカボチャ祭りに浮かれる人々

その昔「中の中」だと思っていたが流れ流れて下流老人

仕事無く蓄えは無く扶養者ありげにわれこそは下流老人

何を尋ねても「加齢、加齢」というげに医者とは楽な商売

お御籤で凶を引きたる人ありきもう一度引き給えと勧めてはみたものの

今日もまた指をくわえて眺めている隣の柿が熟して腐ってゆくのを

日米の安保のごとく並び立つ薄とセイタカアワダチソウ

わが家でも猫を一匹飼っている私の背中で丸くなるネコ

土曜日の朝一番の散髪屋息子と並びて髪を切られる

おでこには点検シールを二枚張られすべての車は黙して走る

八割がた雲が空を覆っていても晴れなんだって そんな話初めて聞いたな

土日なく働き続ける皆さんに熱き連帯の挨拶を送ります

「日日日」上から三つ重ねて「たそがれ」と呼ぶげに日本語は玄妙なるかな

ことごとく毬栗落ちし林かな

暫くは蜻蛉の群れに混ざりけり

彼岸花イデオロギーには毒がある

秋闌けて憲法九条断末魔

気違ひが出刃包丁を持つ九月哉

なるほどね日豪トンガニュージーランド合体したのがジャパン・ウェイか

洗濯機の指定は9だけどおそらくカップに6でいいのだろう

ゆるゆると朝夷奈峠を登りゆけば待ち構えおりし雀蜂の群れ

法案が叩き潰したパンドラの箱に残りしはつかな希望

なにゆえに亡き父親に贈らなかった息子が呉れし祝いのセーター


 淫行という言葉の妖しさよ生涯に一度くらいは淫行したし 蝶人

なにゆえに第21回~西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧 [詩歌]

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ある晴れた日に 第349回

なにゆえにトイレットペーパーをそんなに使うなと注意するの そういう児なんだからどんどん使わせたらいいじゃないか

なにゆえに風呂の湯が汚れると文句いう 利用者ごとに取り替えたらいいじゃないか

なにゆえに未来未来と叫んでる過去の過失を見たくないから

なにゆえに未来未来と喚いてる過去のあやまちを忘れるために

なにゆえに今朝はビタミン剤を飲んでるのきのう一時間おきに目が覚めたので

なにゆえにマウンテンバイクで劇走してるここは鎌倉のハイキングコースだぞ

なにゆえに3千歩あるいただけで消耗する人世もそろそろ終わりに近付いているので

なにゆえに5回も妻を取り替えるおのれの欲望に突き動かされて

なにゆえにテレビの「取説」が無くなったいくら探しても見つからない

なにゆえにわが弟の額に石を投げしやたちまち鮮血滴り落ちしが

なにゆえにまつのちゃんの顔に雪つぶてを投げしや当たりしつぶてに復讐せんとて

なにゆえに背中に恐怖が忍び寄るプラットフォームの先頭に立つとき

なにゆえにマーラーの二番を二枚組にする一枚のCDに収められるのに

なにゆえに露台に蟻が押し寄せる我が家を蟻塚と間違えて

なにゆえに救急車が静かにやってくるあの家はもう常連さんだから

なにゆえに2千ポイントのおまけがある日に買わなかったHMVのカラヤンCD

なにゆえに見境なしに人を殺すムクもタマも殺しを知らない

なにゆえに73歳ではや逝きしやわが郷里の先輩仁田睦男氏

なにゆえに直ちに国会を開かないお前は憲法と民意を愚弄するのか

なにゆえに施設の中ではくつろげぬ家ではあんなに楽しそうなのに

なにゆえに高倉健は身悶えしている権力が極私的暴力を許さないので

なにゆえに九回裏に大逆転韓国では野球も戦さなれば

なにゆえに北の湖は急逝したか白鵬の猫騙しに怒り狂って

なにゆえに世界はだんだん暗くなる夢と希望が消えてゆくから

なにゆえに大阪はああいうことになっている浪速のことは夢のまた夢

なにゆえに同じ筒から違う液が出るいろいろあっても水に流すため

なにゆえに原節子は姿を隠したか「喝采」の歌手だけが知っている

なにゆえに自爆バンドを身につける自己滅却しか頭にないので

なにゆえに天皇制が生きながらえるシャッポがないとなぜだか不安

なにゆえに耕君はおばあちゃんチへ行くカレンダーを来月分に取り替えるため

なにゆえに耕君は施設では荒れ狂う家ではいつも楽しくしてるのに


 なにゆえに叶姉妹の妹が緊急入院おいらには全然関係ない話だが 蝶人

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その7 [詩歌]

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ある晴れた日に 第349回


わが街の花は竜胆だというけれど市内のどこでも見たことがない

広辞苑は第4版があれば十分よと笑っておりし歌人ありきつつがなきや

一枚のポロシャツだけで人変わるたかがファッションされどファッション

家毎に三つの憂い窓閉ざす

冥界より聴こえる音や霜月尽

世界中がアマゾンの本をポチるので火星社書店は潰れてしまった

8.6 8.8に8.15 すべてが単なる記号となるのか

真夜中にミンミン鳴くのはやめてくれ明日は朝が早いんだ

この辺は三軒に一軒が空家ですこの国には家も土地も要りません

脳内にショスタコーヴィチの「ワルツ第2番」鳴り響き五七五なぞ歌えやしない

芸大の庭で拾いし一粒のムクロジの実が大樹となりたり

のっとおんりーばっとオールソオしかわからんかった何十年も英語を勉強したけど

スコーカー激しくびりつく真夜中のグレングールド

適当に「いいね」を押せばそれでいいのにああだこうだとからんでくるやつ

君も僕も最後の最後までつまびらかにしない人世でいちばん大切なこと

となりの家の子が声を限りにラアラアと意味無き意味を叫んでいる

みずからの存立自体を危うくする存立事態を存立させるな

毎日が日曜のわたくしなれどなぜだか日曜日はどこか違う

一頭の蝶なら渡れる韃靼海峡

クワガタは子には宝農夫には栗を根絶やしにする恐るべき毒虫


「通帳に2億円の預金がある」と嘯く商人の隣で冷やし中華を食したり 蝶人


西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧 [詩歌]

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ある晴れた日に 第348回


われもまた一匹の獣であるMGMのライオンとなりて吠えておれば

友ありて利他だ利他だと叫んでいたが今頃どこでどうしているか

北海道には棲息しないのになぜヤマトシジミ

家の中でくたばっておる文月尽

また朝日は昇る頭領を無くした息子たちの上に

昆虫は動物の仲間でねその中でいちばん気持ち悪いのが人間なんだよ

赫赫たる業績遺し我よりもいち早く泉下に沈みし人々

三十年飽きず眺めし山麓にウサギ跳ねると初めて知りぬ

「ああそうかそうするよ」といつも長男のわれに素直なりし

水無月や不穏のうちに日々過ぎる

こなた鶯かなたガビチョウ日中歌合戦 

小林散髪屋へ行って一晩寝て鏡を見たらエグザイルの後ろの方で踊っている奴の頭のように突っ立っていた

<不味くはないが美味でもない>と書き込みありし中華でランチする

自動車になぎ倒されしてふてふの瑠璃色の羽羽羽

賛成はしないが反対もしなかった人々が巻き込まれてゆく戦争

憲法を返せ北方領土を返せ拉致被害者を返せ国立競技場を返せいますぐに

この夕べ人々はみな惑星にしてゆるやかな円弧に従い歩みゆく

莫迦な親がガツンと一発喰らわせなったのでいつも偉そうにしている莫迦

お隣の躾の悪い飼犬の無駄吠えに耐える日曜の午後

カワセミを見るといいことがあるというけれどそうでない日もある

ゆくゆくは天皇になるてふ少年が両親と観たのは昆虫映画

どのような昆虫よりも人間が気持ち悪いといずれ知るだろ

勤務中写経をしていた上司ありき今頃どこでどうしているか

拡散も転送も希望せずぽつぽつと紡いでいる私だけの言葉

遺されしスノードームはいつも冬美は恐ろしきもののはじまり

死に近く食草ならざる草に産む認知症の蝶哀れなり

そいつらを見付け次第リモコンで切ってゆくぶち切ってゆく猪八戒

青空に白い雲が浮かんでいる絵に「呪い」てふタイトルをつける画家

あのねえ人世は生きてるだけで辛いのよ偶には楽しいのよ

バングラデシュの誰かが縫ったユニクロのカジュアルシャツ着てコンビニへ行く

ブタブタ人嫌いじゃないのは石ちゃんだけ

見境なく産卵するや紋黄蝶

グールドの唸りは深し五月闇

ドロンドローンアランドローン

人は死ぬ誤嚥で御縁で五円で御免


 マツコデラックス伊集院光安倍晋三左の者の共通点を挙げよブタブタ  蝶人

十一月の歌 [詩歌]

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ある晴れた日に 第347回

朝から晩まで風が吹き
ムクロジの葉っぱが落ちる
実も落ちる

太郎には太郎柿、次郎には次郎柿、
宮部みゆきには太郎次郎柿
ゲゲゲの鬼太郎には輝太郎たもれ

紫式部には西村早生柿、清少納言には高瀬柿
和泉式部には越前柿
熟熟熟柿は柿右衛門にたもれ

早秋柿、新秋柿、愛秋豊 
伊豆柿、陽豊柿、天王柿
ムクドリ、ヒヨドリ、木守柿

平核無柿、蓮台寺柿
鳥も喰えない祇園坊
老い先短い鴉には老鴉柿たもれ

見よ大木家の塀の上
棘で固めた柊の
白き小さな花馨る

源義経には甲州百目柿、武蔵坊弁慶には大富士柿
佐々木小次郎には夕紅柿、
宮本武蔵には葉隠柿たもれ

紀の川柿、刀根早生柿、西条柿
富士柿、鶴の子柿、四ツ溝柿
トンビは瞑想に耽ってる

芭蕉には富有柿、蕪村には愛宕柿
正岡子規には御所柿、
山頭火には市田柿

漱石には太秋柿、森鴎外には横野柿
三島由紀夫には花御所柿
ドナルド・キーンにはシャロンフルーツ

庄内、八珍、おけさ、まっくろ黒柿
とっておきの渋渋渋柿三百個
超腹黒い安倍蚤糞へたもれ

朝から晩まで風が吹き
ムクロジの葉っぱが落ちる
実も落ちる


  美味そうな柿がいっぱいなっている鳥が寄らぬは渋柿のあかし 蝶人

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その5 [詩歌]

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ある晴れた日に 第346回


屁理屈で捻くり回した歌詠んでいったいなにが楽しいんじゃ

なにゆえに男性ダンサーのあそこはあんなに大きいいったい何が入ってるんだ

なにゆえに数字の1をiと書くイッヒMozart電話も一番

セッテンバー紅葉が燃える歩道橋の上で君を待ち伏せ

真夜中の携帯が待ち受けている冥界からの便り母上の声

われのことを豚児と書かれし日もありきもういちど豚児と呼んでくれぬか

友達の友達は友達なので羽仁未央ちゃんは霊界の友

展覧会に雑巾の絵を出す息子どなたか一枚買うてくだされ

アハハハハとキャスターが笑ってるあれはほんとに笑っているのか

なにゆえに耕君は九月のカレンダーに取り替えるまだ八月の二十五日なのに

おのずから好きな人好きなもの好きな国など少なくなる年ふるにつれ

人の齢春夏秋冬空の雲過ぎにぞ過ぎてまた冬となる

侵略の反省もお詫びもしたくないかわりにいつでも戦争できるようにする

友達の友達は友達なので安倍晋三は赤の他人

粛々と進めるのが得意大好きです人の意見は全然聞かずに

粛々という言葉を使います反対意見を無視するときは

ネット右翼になりすましヘイトスピーチしてたらいつの間にやらアベシンゾウ

キンポウゲコデマリミズキヒメウツギ草花の名前を覚えることだけが生きる喜び

チューリップナガミヒナゲシフジボタンナズナモクレンツルニチソウ

ライラックシャクナゲカタクリシャガシランキブシタンポポヒツジグサ

オオデマリコデマリウツギタイサンボクツツジハナモモモッコウバラ


東西の正横綱はマンガラジャラブ・アナンダ ムンフバト・ダバジャルガル 蝶人

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その4 [詩歌]

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ある晴れた日に 第345回


瑠璃蜆また瑠璃蜆てふてふてふ瑠璃子と瑠璃男の瑠璃色ダンス

蝶よりも蛾を低く見るそのこころ人種差別のはじまりなるか 

何気なくを何気視線を目線と平気で書く奴等とは今日を限りに絶好じゃなくて絶交

失せ物ありシャープの液晶テレビの取り説&保証書

今日もまた観光客が押しかける(嫌なんだけど)ようこそ!ようこそ!

獄舎にてなき青春の思い出をつくりゆかんと死刑囚歌いぬ

食卓に形見のように立っている榮久庵先生特製醤油瓶

草の名も花の名前も鳥の名も知らずに過ぎし七十年

なんとかチャンとなんとか君が熱愛していて俺とは何の関係もない

錦織が敗れし後はシンとなる熱烈なる我が国のテニスファン

ピース、ピースと泣いていましたパブロ・カザルスが弾く「鳥の歌」

ただ一人ブラボーブラボーと叫んでいる恐らくあれは身内なるべし

香港の散髪屋にて髪を切る洗髪もなく按摩もなしに

釣銭がおぼろになりし商店主と一緒に数え直す秋

七十年も経てば全部忘れてしまうのかよそ様の国に押し掛け罪なき人を殺したことも

安全と生命を守るといいながらとつ国との戦に巻き込まれていく

同盟同盟とどめきながらずるずるエイリアンの内臓にからめとられてゆくニッポン

散華とは呼ばずあえて犬死というそれが本当の慰霊なれば

ガビ鳥よ中国へ帰れお前の大声で鶯の麗しき鳴き声が聞こえない

トウケイがトウキョウに大坂が大阪になってからニホンはニッポンになった

ぺち雲虫郎舎が電畜以欄たですうぬ。だち、あり典膣、具みざて。

体当たりの演技なりき体当たりすれば名演技とはいえないにせよ

さようならはいサヨウナラ左様なら親しきひとが次々に死ぬ

一日の終りに「さんま御殿」見て少女のようにたんぽぽのように笑っている私の奥さん


  九回裏に四点を奪いけり韓国の執念の凄まじさよ 蝶人

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西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その3 [詩歌]

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ある晴れた日に 第344回



午前零時銀座通りの真ん中で黄色いウンチが湯気を立ててる

カバライキンカバライキンと叫んでる君も私もバイキン仲間

年に二度寺尾家にやってくる富山ナンバーの薬売りのおじさん

果樹園のてっぺんに立ち眺むれば西に富士山東に東京湾

七十年きれいなお姉さんにあこがれてきましたまだ探しています

生協で一切一三〇円のチリ産シャケを五匹買うことを生活と云う

妖艶な美女をこやしにしながらも今夜も元気にタクトを振るデュトワ

この広い世間のどこいらで景気が回復しているのだろう

闘争を学園紛争と言う人に異を唱えずに黙して帰る

我が国の存立を危うくしている連中が存立条件について論じる不条理

「どちらとも言えない」に○をしてる間に骨を抜かれる我らの九条

卑怯者非国民と呼ばれても銃は握らぬよし殺されるとも

限りなく日の丸から遠ざかりただうじうじと生きてゆきたし

日の丸を振らず君が代を歌わず私利私欲のみを死ぬまで

ガギグゲゴ鼻濁音を絶滅させないためにぐあんばろう

友達の友達は友達なのであの有名な井上八千代さんもSNS友達

今もなお不意に甦る声ありて「スタップ細胞はあります」と言う

白鵬よ偶には負けろよと云ってみる誰も黙っているようなので

「下郎下がりおれ」なぞといひて袈裟がけに斬り倒せばさぞ愉快ならむ

純白のレースのカアテンに覆われてすべての家にひとつの秘密

こんちくしょうと喚きながら投じた石は弟の額の肉を削りき

職が無い職は無けれどひと様の苦しみが分かる息子ではある

真昼間からライトを点けてる自動車に二本の指で消しなと合図す

長男の面差しの裏に住むわが懐かしき父母の姿よ

なにゆえに何匹も犬猫を飼う君は淋しい犬猫病患者

一台のベンツが八幡様を曲がり行く一一九二というナンバー付けて

雪柳椿辛夷桜花母命日に我が見し花 々


   鴎外を三百円漱石を九百円で古本屋は売る 蝶人

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その2 [詩歌]

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ある晴れた日に 第343回


ノアという箱車ボックスカーが走り去る選ばれし家族とプードル乗せて

要するにただの白い車じゃないかライムホワイトパールクリスタルシャインカラー

車などみな似たりよったりなれど買う人が無理矢理個性をつける
 
或る夜に大イノシシが現われておっとり刀の猟友会員

一身の都合にて入社し一身の都合にて退社していく人はみな

同じニュースを朝から晩まで流しているテレビ局


親しげに皆が挨拶してくれるどこの誰だか知らない人が

癒された元気をもらいました等々々手垢に塗れた言葉を使うな

真夜中の凍結を防ぐために自らを暖めているひとりぼっちの我が家の風呂よ

滑川に落ちた緑の手袋よ五指を開いて我に訴う

「外国人出て行け」と君が叫ぶたび「日本人出て行け」と返るこだま

暗黒の帝王が君臨する我ら今ゴッサムシティの住人 

この道はいつか来た道愚かなるわが民草がたどりたる道

世界一平和な国になるためにあらゆる武器に別れ告げしが 

改正にあらず改悪である悪しき憲法を作るのだから

原発に賛成もせず反対もせぬ人こそが国運を握る

「ねえあたしの遺影撮ってよ」というファインダーの先の義姉の笑顔

親しげに皆が挨拶してくれるどこの誰だか私は知らない

もう二度と会うまい人の手を取りて長い長い握手をしにけり

グルグルとレントゲン台で踊ってる古稀の男の胃検診サーカス

とある日とある街でそれは起きるだろう前代未聞の奇跡や災厄

「でもスタップ細胞はあるかも」言いながら自転車を駅まで走らせる

共同体の熱きほてりを遠ざかりゴールポストに消えゆく球見る

ヒューヒューと喉元過ぎる音さえも明石家さんまは笑いに変えて

ただ一首天下を揺るがす歌詠めば冥土の土産に旅立つものを

「今がいちばん若いのよ」と妻が励ますどんどん歳をとりゆく私

バルテュスの夢見る少女テレーズの白いパンツがどうにも気になる

ただ一本の蓮の蕾が咲かざりき

絶望は希望に似たり寒昴
 
歳時記をバイブルにしながら生きて行くなんておいらにゃ到底出来ないよ

曇天の空より落ちる雪の片障がいの子もまた天の贈物

モンシロなどつまらぬ蝶と思いしがいつか消えゆくしかと見ておく


  みずからの死ぬべう夕べに着る服を夢の中にて考えているなり 蝶人


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