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吉田秀和放送収録本「モーツアルトその音楽と生涯2」を読んで [読書]

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照る日曇る日第727回

 吉田秀和翁の「名曲のたのしみ」のモーツアルト放送の収録編集版を読んでいると、故人の独特の風貌が声音と共に蘇って来て、ただただ懐かしい。

 本巻では1981年から82年にかけての放送分で、内容としては、モザールが1772年から1776年にかけて作曲したオペラ「ルーチョ・シッラ」「牧人の王」「恋の花作り」、ウイーン弦楽四重奏曲、初期のピノソナタ、ヴァイオリン協奏曲、木管のためのディヴェルティメント、ハフナー・セレナードなどを編年体で取り扱っている。

 私は吉田翁が本書で提示されたCDをかけながらゆっくりと頁を繰っていったが、それは今年の短くも激しく燃えた夏のこよなき伴侶であり思い出であった。

 改めて見直したのは、ここでもそのいくつかが紹介されている初期のオペラの素晴らしさと楽しさで、ふだん「フィガロ」や「魔笛」や「ドン・ジョバンニ」や「コシ」ばかり愛聴されているであろう全国の学友諸君には、ぜひご一聴をお勧めする次第である。

 それにしても鎌倉雪の下の吉田秀和邸が家も、庭も、玄関に続く細い路地もことごとく消え失せ、なんの変哲もない更地と化しているのはどうしたことだろう。

 いつか氏が、「大仏さんのお宅は残されたが小林秀雄さんのところはあっという間に跡形も無くなってしまった」とどこかに書かれていたが、まさかそれが我が身に及ぼうとは夢にも思われなかったろうに。

 ああ無情!

    なにゆえに跡形もなく消え失せた鎌倉雪の下吉田秀和邸 蝶人

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