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アーノンクール指揮チューリッヒ歌劇場・シンティルラ管でモーツアルト「にせの花作り女」を視聴する [音楽]



♪音楽千夜一夜第84回

モーツアルトイヤーである06年2月にスイスのチューリッヒ歌劇場で行われた公演です。
アーノンクールはウイーンに帰還するずっと昔から、この地味な歌劇場でバロック・オペラを振り続けていましたが、今回のシンティルラ管弦楽団という名前は初耳です。同歌劇場の選抜チームの名称かもしれませんが、とても情熱的な演奏。右翼第2バイオリンの2列目の日本人女性が、とても表情豊かにモーツアルトに取り組んでいる姿を見てああ音楽ってこういう風に夢中にならなければ、と改めて思わされました。

日本のオケ、とくにN響の奏者たちはどいつもこいつも冷感症で不感症で冷血漢の爬虫類ぞろいでいくら指揮者があおっても能面のようにニル・アドミラリな表情を変えようとしません。楽器のお稽古はしばらくやめて、楽しければ楽しい顔を、悲しければ悲しい顔をして演奏するような演劇的トレーニングでもすれば少しはましな演奏ができるのではないでしょうか。私はこいつらの仏頂面を見るのが厭なので、いつもテレビの音声だけを聴いているのです。

閑話休題。さて演奏ですが、御大アーノンクールの指揮はさすがに手慣れたもので特に若手のソプラノ歌手と合わせたときの弱音の響かせ方、音の消し方が見事。同じ極東の御大である小澤先生など大いに見習ってほしいものです。もう遅すぎると思うけど。

なにせこのK196 の作品はモーツアルトが17歳の1774年に書かれた曲なので、プロットもいいかげん(浮気をしたと勘違いした伯爵が妻を刺すが、死んだはずの妻は花作り女と偽って生きていて、誤解が解けた二人は元の鞘に戻る?!)なら、アリアの出来栄えもいまいちです。20年前なら公演などあり得ない幼稚な作品とイッセルシュテット以外の指揮者が考えていたに違いありませんが、その若書きをアーノンクールはじつにもっともらしく聞かせます。

さすがに後年の「フィガロの結婚」や「ドン・ジョヴァンニ」などの完成度はありませんが、たとえば後者のレポレロの有名な「恋人のカタログの歌」を想起させるアリア、そそて「フィガロ」の終幕の夜の庭園のドタバタ劇そっくりの舞台が、すでにこの段階で構想されていたことがよくわかるのです。

いかに天才とは言え若き日のモーツアルトがそれこそ計画的に傑作への階段を一歩一歩切り開いていったことが如実に理解できるだけでもこのオペラは価値があります。

出演は題名役にエヴァ・メイ、イザベル・レイ、クリストフ・シュトレールなどでまずまずの歌いぶり。演出はトビアス・モレッティ、美術はロルフ・グリッテンベルクですが、すべてを総覧していちばん見事な出来は衣装のデザインでした。誰が担当したのだろう。


♪横須賀線で母親と押しくら饅頭しているお下げの姉妹 茫洋


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